最近の判例(高齢者問題)
◎最高裁平成28年3月1日第3小法廷判決(判タ1425-126)
精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者として,民法714条1項が類推適用される。
〇東京高裁平成25年9月18日判決(判タ1421-140)【上告】
高齢者のした養子縁組について,その精神機能の程度(長谷川式18点),長期間の同居生活があり,縁組に応じる動機があったこと等の事情から,養子縁組を有効とした事例(原審は養子縁組を無効とした)。
▽東京地裁平成25年5月20日判決(判時2208-67)【確定】
高齢者が通所介護契約に基づき介護サービスを受けている間,送迎車両から降車しようとし,席を立った際,転倒し,翌日大腿骨脛部骨折が判明した事故につき,介護施設の運営者の安全配慮義務違反は否定されたが,速やかに医師の診察を受けさせる義務違反が肯定された事例(慰謝料20万円)
▽横浜地裁平成24年3月23日判決(判時2160-51)【控訴後和解】
終身利用権付き介護有料老人ホームに入所した87歳の男性が褥瘡が悪化し細菌感染による敗血症を発症して入所した17日後に死亡した場合について,特定施設入所者生活介護利用契約の不履行・注意義務違反を認め,遺族に対する損害賠償責任が認められた事例(認定された慰謝料は,死亡した入所者1200万円,相続人各100万円)